サケの孵ふ化→放流
逆川を愛する会、茨城県環境監理協会、水戸市環境課
IBaR
サケ産卵調査と学習会に参加し、
サケ卵の採取→孵化→飼育→放流を体験しました。
久慈川や那珂川をはじめ茨城の川に、
秋になるとサケが海から遡上し産卵します。
茨城の人々は古からサケを食料にしていたようで、
常陸国風土記(奈良時代)に「スケ(サケの古名)漁」の記述があります。日立の助川は「サケの川」の意味かもしれませんね。
いきもの
Gallery5
野山の
卵の採取
●11/30 採卵場所は、JR水戸駅から直線で500m、
逆川が桜川(那珂川の支流)に合流する美都里橋の下。
こんな市街地の川に毎年サケが遡上・産卵します。
橋から見下ろすと、そこに
サケのカップルらしき魚影。
これから産卵するのかな。
©風が吹いている。
特別な許可を得て、川の砂利の中からサケの卵を採取し、各自が持ち帰って自宅の水槽で飼育します。
逆川(桜川の支流)
ここにもサケが遡上します。
産卵の後、命尽きたサケは、他の命の糧になります。まず、野鳥に眼を食べられるらしい。
厳粛な自然の理ことわり・・・。
孵化/観察/飼育
●12/2 水温/ 9.0° 直射日光を避けて暖房のない屋内で。水槽、エアーポンプ、デジタル水温計を購入しました。
祈るような気持ちで見守っていたら、卵2個に眼ができた(発眼)。成長の第一関門クリア。
●12/7 水温/ 8.3°〜13.9° 水温が高くなるので、大きな水槽に移す。昨日は眼が動いて感動したのだけれど、今日は動かない。心配・・・。
眼のある部分が重いので、少しでも水が揺れると卵が動いて眼が下に隠れてしまう。
眼を上にして写真を撮るのは、けっこうむずかしい。
左/採取時から死んでいた卵。不透明な白色、硬くて比重も重く感じる。右/ミズカビ(鞭毛菌類)が生えた卵。他の卵にうつらないよう隔離して観察中。
●12/11 水温/ 7.9°〜10.8°
中央の卵は、体ができつつあるようだ。現在、5個の卵に眼ができた。
●12/21 水温/ 6.8°〜10.7°(適温8〜12°)
体が、できてきた。右の卵は、稚魚の頭の形がおぼろげながら分かる。卵の形が、いびつになった。
●12/29水温/ 6.3°〜9.8° (適温8〜12°)
生まれた! 今日、卵が孵化して“仔魚
(しぎょ)”になりました。「鮭一郎」と命名。しばらくは、お腹に付いている“臍嚢/さいのう”(黄身)の栄養で成長します。水温が低いので、さいのうが無くなって稚魚になるのは、2ヶ月後でしょうか。
卵の眼のところに小さな亀裂を発見。ほどなく、頭が出て来た!
まだ卵の殻が完全には離れていません。卵の殻から体がすべて出て、殻がお腹の“さいのう”から外れるまで2時間ぐらい。背びれや尾びれが、まだ繋がっています。卵の中で丸まっていた名残もありますね。体長=17〜8mm
●1/4 水温/ 5.6°〜13.5° (適温8〜12°)
「鮭二郎(孵化後1日)」孵化直後の体長が、
鮭一郎より大きい。体長/22〜3mm。水温
が下がりすぎるので、水槽用ヒーターを設置。
●1/6 水温/ 8.3°〜13.8° (適温8〜12°)
「鮭一郎(孵化後8日)」消化管や心臓が透けて見える。
体長/26mm
●1/18 水温/ 10.2°〜12.8° (適温8〜12°)
孵化した順に、鮭一郎、鮭二郎、鮭三郎、鮭四郎と名付けた。鮭一郎は、孵化後20日、体長/27〜8mm “さいのう”が小さくなってきた。
動画準備中
●1/13 水温/ 8.4°〜12.2° (適温8〜12°)
サケの赤ちゃんに名前をつけた。
これは「鮭一郎(孵化後15日)」心臓の動きがよく見える。
●1/29 水温/ 9.6°〜13.5° (適温8〜12°)
●2/5 水温/ 5.8°〜14.1° (適温8〜12°)
鮭一郎 孵化後38日、体長/32mm
腹部にある成長のための栄養“さいのう”(黄身)が,いちだんと小さくなった。
本日、最後の卵が孵化し、鮭五郎が生まれた。卵に黒いカビのようなものがついて、あきらめかけたけど、良かった。
●2/7 水温/ 10.6°〜14.2° (適温8〜12°)
“さいのう”(黄身)は小さくなったけれど、お腹は開いている。
●稚魚が体長5〜6cmに成長すれば放流です。
(これは1年前の写真)
●2/17 水温/ 12.4°〜17.3° (適温8〜12°)
お腹が閉じかけて“仔魚(しぎょ)”から“稚魚”になる直前。ときどき水槽の上まで泳いだりして、メダカ用の餌を食べはじめました。
千波湖学習会
多くの写真を使って、子どもから大人までを対象に、
分かりやすく楽しく説明していただきました。
千波湖をバックに、サケについての体験学習。最高のロケーションですね。
調べてみました。
●水戸で日本初のサケの孵化放流 1877年(明治10年)
旧常盤村でサケを採り、旧青柳村の養魚池で孵化・育成したそうです。
※養魚池は現在の新宿御苑や青梅など近県の数カ所にも設置。水戸から卵を運びました。放流は那珂川をはじめ数カ所で。
●産卵環境/砂利質で湧水のある川床で、流れが緩やかなこと。
・湧水=水温が一定で水がきれい。酸素の供給量が多い。
・砂利=卵を外的や紫外線から守る。
1匹が、約3,000粒を4〜5日かけて産卵。
●孵化/受精後,毎日の水温を足した“積算温度”が480度になると孵化するそうです。
たとえば、水温が8度だと60日。8度×60日=480度
水温12度だと40日。480度÷12度=40日
●仔魚(しぎょ)/孵化後も砂利の中に潜んで外敵から身を守り、
お腹の袋「臍嚢/さいのう(卵黄)」の栄養だけで成長。
体長2〜3cm
上の写真は孵化後 2〜3週 (推定)
臍嚢は次第に小さくなり、
受精後の積算温度 900度(孵化後6週ぐらい?)で無くなり“稚魚”になります。
●稚魚/臍嚢が無くなると(小さくなると?)、
砂利の中から出て(これを“浮上”という)、小さな水生昆虫などを捕食します。
飼育下では餌(魚粉等を加工したもの、家庭では市販の川魚用の餌)を与えます。
・体長/4cm ・体重/0,4g
●放流適期/積算温度 1,300度(浮上から1〜2ヶ月)
・体長/5cm以上 ・体重/1g以上 ・沿岸海水温/5度〜
●脂ビレ(あぶらびれ)/サケ科など数種の魚にある特徴的なヒレ。
netに、カナダ人科学者の論文が紹介されていました。
サケの脂ビレを切除して泳ぎを観察する実験から、
脂ビレは河川を長時間泳ぎ回る上で
流体力学的に有効なのではないかとする仮説です。
ちなみに、物陰に隠れて獲物を捕食する魚種は、
持久力より瞬発力を必要とするので、脂ビレは無く、
背びれや尾びれの位置形状もサケ科と大きく異なるとのこと。
なるほど・・・!
●サケ漁の歴史
奈良時代の常陸国風土記にサケ漁(当時の呼称は“スケ”)の記述があり、江戸時代には水戸藩がサケを幕府や朝廷に献上していたそうです。
千波湖周辺をはじめ水戸・茨城が、
人と自然が豊かに共生する理想郷になるといいなあ・・・